『君の膵臓をたべたい』

※小説につき、多少のネタバレ注意。言い過ぎないよう、注意はしてますが。


賛否両論を聞くこの小説。確かにところどころ、わざとらしい感じを僕も受けましたが、この物語に僕が引き込まれるのは、主人公の男の子にものすごく共感するから。もう、男の子になりながら、物語の中に入り、最後にその悲しみと救われた感情が、自分のことに感じられるから。それほどまでに、人の心情とその変化を描いたこの小説を、僕はすごいなと感じました。


読んだのは、確か一年前ぐらい。夜に読み始めたら、一気に引き込まれて、読み切ってしまった覚えがあります。そして、その勢いのまま、ブログを始めました。そのときの記事がこれです。一年越しに、今日また読んでみたけれど、また一気に読んでしまいました。そしてまた感動しました。改めてすごい小説だと思います。

高校二年生の2人。クラスメイトの男の子と女の子を中心がこの物語の中心。男の子は、同級生と全く関わらず、友達はいない。家でも学校でもずっと本を読んで過ごしている。一方で「明るく溌剌とした」女の子は、友達も多く、皆に認められている。まったく正反対の二人が、あるきっかけから交わるようになる。男の子が病院で、彼女の秘密を知ってしまうのだ。その秘密とは、膵臓の病から彼女は余命がいくばくもないことだった…。


そこから物語は始まっていくのだけれど、それは置いておいて。高校生の男の子に、僕は、高校時代の僕を重ね合わせて読んでしまうのです。高校のとき、僕は積極的に周りと話す方ではありませんでした。人に話しかけたり、あるいは人を誘ったりすること。それをどうやってするのか、わからなかったのです。すると、最初の友達づくりの輪に入れず、一人でいるようになりました。それでいながら、僕も人と話して、笑って、騒ぐのは好きだったので、いつも羨ましいなぁと思っていました。けれど、それが叶わないと、今度は自分の殻に閉じこもるようになりました。友達ができないことは恥ずかしいことだと感じ、自分を守る必要があったのです。そういう(友達と楽しく騒ぐ)ことには興味がないよ、と振る舞うことで強がっていました。楽しそうなことに反応せず、一人で携帯をいじったり、部活に集中したり、勉強したりしていました。すると、当たり前ですが、周りもますます僕を誘わなくなり、僕はますます自分の殻を強くしていく。そんな負のスパイラルに陥ります。


この物語の男の子は、僕とまったく同じわけではないけれど(冗談を言い合えたり、本という夢中になれるものがあったり)。似てたなぁと思ったのが、物語の初期の男の子の言葉。


「僕は自分のことを話すのは好きじゃない」
「誰も興味がないだろうことを、へらへらと自意識過剰に喋りたくないんだ」
「僕自身は、他の誰かに興味を持たれるような人間じゃない」

(p.42)


この感覚だなぁ、としみじみ思ってしまいます。「誰も僕に興味がない。いいんだ、僕も周りには興味がないから」と、諦めによって周りを拒絶し、自分は他とは違うんだと、ある種の優越感を持って突き放す。本当は、強がりだって心の中ではわかっているのに。


だけれど、男の子には、自分と正反対の女の子と言葉を交わし、同じ時間を過ごすことで、だんだんとその心に変化がおとずれます。人と交わること、その時間を初めて楽しいと感じ、人と関わること、人に興味を持つことに、少しずつ心が向いていきます。そして、人と向き合うことのできない自分の弱さ、自分の心と素直に向き合うことのできない臆病さ。それを気付かせてくれた女の子の言葉が、僕の心にも同じように響きました。


「生きるってのはね」
「・・・・・」
「きっと誰かと心を通わせること。そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ」

(p.222)


人がいるから、自分がいる。そんな風に生きる彼女に、自分もなりたい。その心の奥底の願いに男の子が気づき、感動したように、僕もまた、誰かと心を通わせて「生きて」いきたいなぁと感動していました。


そして、物語はそこでは終わらず…。最後にまた、僕がもっと感動する言葉がありました。物語は、男の子の目線で終始語られていきますが、最後に女の子の想いが語られます。そこで、男の子が思いもしなかったところを、また気付かせてくれます。それにまた、僕は救われる思いがしました。ただ、それを言ってはおもしろくないので、興味のある人はぜひ読んでみてください。


この本を読み終えた後、「僕ももっと人と関わろう」「誰かと心を通わせて生きていこう」と改めて思い、ブログを始めました。自分の言葉、想いを、好かれても嫌われてもいいから、伝えていこうと。そう決意したきっかけになった本です。


《 書籍情報 / Information 》

著書:『君の膵臓をたべたい』

著者:住野よる

発売日:2017/04/27

出版社:双葉社

ページ:325p


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